スパーリング中にパンチをもらった拍子に、マウスピースが「カパッ」と外れたり、口の中で飛ぶような感覚に襲われたりしたことはありませんか?
マウスピースのズレは、集中力を奪うだけでなく、顎の骨折や脳へのダメージ増大につながる危険なサインです。「自分は顎が小さいから仕方ない」「安いものだから」と諦めていては、いつか大きな怪我をしてしまいます。
この記事では、マウスピースが外れる本当の原因と、吸い付くようなフィット感を手に入れるための「選び方」と「成形テクニック」を解説します。
なぜボクシング中にマウスピースが外れるのか?3つの原因
練習中にマウスピースが頻繁に外れる、または落ちてくる場合、主に以下の3つの原因が考えられます。まずは自分の状況がどれに当てはまるか確認しましょう。
1. お湯での「成形」が不十分である
市販のマウスピースの多くは、お湯につけて柔らかくしてから歯型を取る「ボイル&バイト」方式です。この工程で失敗しているケースが最も多いです。
温度が低すぎて素材が十分に柔らかくなっていなかったり、噛み合わせる力が弱かったりすると、歯の隙間に素材が入り込まず、保持力(リテンション)が生まれません。
2. サイズが合っておらず「オエッ」となる
「外れる」というより、無意識に自分で「外そうとしている」ケースです。
マウスピースの後端が長すぎて喉の奥に当たると、嘔吐反射(オエッとなる感覚)が起きます。これを避けるために無意識に顎をずらしたり、舌で押し出したりしてしまい、結果としてマウスピースが浮いてしまうのです。
3. 保持力の低い「単層構造」を使っている
数百円で売られている安価なマウスピースは、シリコンが一種類の「単層構造」であることが多いです。
これらは全体が均一な柔らかさであるため、強く噛んでも変形しやすく、激しい呼吸や衝撃で簡単に外れてしまいます。

スパーリング中にマウスピースが飛ぶ危険性
「また外れた、まあいいか」と軽く考えてはいけません。マウスピースが定位置にない状態での被弾は、取り返しのつかない事故につながります。
- 口内の裂傷:ズレたマウスピースのエッジで唇や口腔内を深く切ってしまいます。
- 歯の破折と脱臼:衝撃吸収が機能せず、歯が折れたり抜けたりするリスクが急増します。
- 試合・スパーの中断:マウスピースが飛ぶと、レフェリーは試合を止めます。何度も繰り返すと減点対象になるほか、練習ではパートナーのリズムを崩し、迷惑をかけることになります。
外れるストレスから解放!保持力強化モデルの選び方
絶対に外れないマウスピースを選ぶために重要なのは、ブランド名よりも「構造」と「素材」です。以下の基準で選べば間違いありません。
「多層構造(ジェルライナー)」を選ぶ
外側は衝撃を吸収する硬いフレーム、内側(歯に当たる部分)は形状記憶性の高い柔らかいジェル素材でできた「2層(または3層)構造」のモデルを選んでください。
内側のジェルが歯の凹凸に完全に入り込むことで、接着剤を使ったかのような強力なロック機能が働きます。
| タイプ | 構造 | 保持力 | おすすめ度 |
|---|---|---|---|
| 安価タイプ | 単層(シリコンのみ) | 弱い | △ |
| 高機能タイプ | 2層〜3層(ジェル入り) | 非常に強い | ◎ |
| 歯科医院 | オーダーメイド | 最強 | ☆(高価) |
おすすめは「ショックドクター」の上位版
市販品の中で圧倒的なシェアと信頼度を誇るのが「ショックドクター(Shock Doctor)」です。中でも「ジェルマックス」以上のグレードはフィット感が段違いです。
正しく成形すれば、口を大きく開けても上顎に張り付いて落ちてこないレベルの保持力を実現できます。
【プロ直伝】絶対に外れないマウスピースの成形・調整術
良いマウスピースを買っても、成形(型取り)が適当だと意味がありません。プロが実践している「外れないための成形テクニック」を紹介します。
1. 長すぎる場合はハサミでカットする
お湯につける前に、一度口に入れてサイズを確認してください。奥歯の後ろにはみ出している部分が喉に当たって「オエッ」となる場合は、ハサミでその部分をカットします。
短くすることで装着時の不快感が消え、無意識に外そうとする動作がなくなります。
2. 「吸引」と「指押し」で真空状態を作る
お湯で温めたマウスピースを口に入れたら、以下の手順で素早く成形します。
- 軽く噛み合わせて位置を決める。
- 全力で口の中の空気を吸い出し、真空状態にする。
- 吸いながら、指を使って唇の上から歯茎に向かってマウスピースを強く押し付ける。
- 舌を使って、マウスピースの内側(裏側)も歯茎に押し付ける。
ただ噛むだけでなく、「吸う」「押し付ける」ことで、歯茎のラインにぴったりと沿わせることができます。
3. 冷水で一気に固める
完全に型がついたと感じたら、口から取り出し、用意しておいた冷水(氷水がベスト)に一気に入れて素材を硬化させます。ゆっくり冷やすと形状が戻ってしまうことがあるため、急冷して形を記憶させることが重要です。

意図せず「外す」癖を直す呼吸法
道具や成形の問題ではなく、苦しくなった時に口を開けてマウスピースを浮かせてしまう癖がある人もいます。
ボクシングの基本呼吸は「鼻から吸って、マウスピースの隙間から『シュッ』と吐く」ことです。
口を大きく開けて呼吸をすると、顎へのガードが甘くなるだけでなく、マウスピースの固定も外れてしまいます。苦しい時こそ歯を食いしばり、細く鋭く息を吐く練習をサンドバッグ打ちの段階から意識しましょう。
よくある質問(Q&A)
多くのボイル&バイト式マウスピースは、2〜3回程度であればやり直し(再成形)が可能です。もう一度お湯につけて柔らかくし、今度は強く吸い込みながら成形し直してみてください。ただし、何度も繰り返すと素材が劣化し、衝撃吸収性能が落ちるため注意が必要です。
使用頻度によりますが、半年〜1年が目安です。また、「噛み合わせ部分が薄くなって穴が開きそう」「表面がギザギザしてきた」「フィット感が落ちてきた」と感じたら、怪我をする前に交換しましょう。
はい、多くのメーカーが「ユース(子供・女性用)」サイズを展開しています。一般用のマウスピースをカットして使うことも可能ですが、厚みや顎の幅が合わないことが多いため、専用の小さめサイズを選ぶことを強くおすすめします。
まとめ:外れないマウスピースでボクシングに集中しよう
マウスピースが外れる悩みは、適切なアイテム選びと正しい成形方法で必ず解決できます。
- 安価な単層タイプは避け、ジェル入りの多層構造を選ぶ。
- 成形時は「吸う」「押し付ける」を徹底し、真空状態を作る。
- 長すぎる場合はカットし、不快感をなくす。
「たかがマウスピース」と思うかもしれませんが、フィット感の良いマウスピースは、防御力だけでなく、噛み締めることでパンチ力アップや体幹の安定にも寄与します。
外れるストレスから解放され、目の前の相手だけに全神経を集中させましょう。その安心感が、あなたのボクシングを次のレベルへと引き上げてくれるはずです。



